練習場所

 ヴァイオリンという楽器、軽量小型で持ち運びに便利なんですが、意外に音は大きいです。個人的な印象では(弾く人の技量にも左右されるそうなんですが)、蓋を閉めたグランドピアノ、ぐらいの音量があります。
 もちろんそんなもの、自分の部屋では弾けません。うちは下町の住宅密集地にあるので、当然の如く楽器演奏は禁止です。しかも大家さんちはすぐ隣。一番ばれたらまずい人に、一番ばれる可能性が高いという状況で、練習しようという度胸はありません。チキンですから。礼金敷金用意するだけの蓄えも無いし。

 金属製の消音器を付ければ自宅でも練習できる、とは聞きましたが、それだと結構勝手が違うそうで、できれば消音器無しで練習できるスペースを確保したほうがいい、とのことで、練習場所を探しました。

 近所の公園(複数ある)。
 うち一つは工場のとなりで住宅から離れているため、いいかなーと思いましたが、東京の夏、屋外でヴァイオリンを練習するのは楽器も練習者も危険と言われ、やめました。東京の暑さは、ヴァイオリンには危険なんだそうです…。

 近所のスタジオ。
 うちから徒歩5分ほどのところに、深夜まで営業している貸しスタジオがあると相方(パーカッション)が教えてくれたので、HPを見てみたら、個人練習一時間450円。ただ、当日でないと予約できないんですねぇ…。

 区内にあるホールの練習室。
 自転車で20分ばかりかかるのが難点ですが、一時間250円。結構広い。

 というわけで、メインの練習場所はホールの練習室、近所のスタジオが取れればスタジオに、ということに。
 ああ、楽器演奏可のアパートに引っ越したいなぁ…としみじみ思う、貧乏学生の私でした。

私のスズキ君

 スズキ君は現在、一緒にやって来たスギトウ君(弓)と共に、楽器屋さんに入院しています…。


 スギトウ君の方は重体で、前の持ち主の方が弓毛を緩めるのを忘れていたため反りが戻っていて、ヴァイオリンに慣れてきたら買い替えを考えたほうがいいですよ、と、修理担当の方から控えめにご意見を頂きました(悶絶)。
 肝心のスズキ君の健康状態は特に問題無く、駒を立ててもらうついでに、弦の張替をお願いするという検査?入院で済んでいます。
 弦の張替って本当は自分でやるものなんだそうですが、ヴァイオリンのちっこさに驚愕しているような初心者には到底無理。E線・A線に張ってあったドミナントという弦で、張替をお願いしてみました。D線・G線はスズキ弦(スチール)が張ってあったんですが、スズキの弦より音がいいですよ、ということだったのでドミナントにしてみました。お値段も数ある弦の中では手頃だったし(ここ重要)。
 しかし、常に予備を用意しないといけないほどよく切れるんですね、ヴァイオリンの弦って…。ドミナントだと、私が知っている限り店頭販売では最安のSでも、一セット4800円だかするんですが…(吐血)。


 でも、修理担当の方が錆びたE線で軽く鳴らした音だけで、どきどきしましたよ。
 やっぱりいいなぁ、ヴァイオリンって。

清水の舞台

 十年ほど前に高校の修学旅行で行ったんですが、あれ、結構高いんですよね。そりゃ、六本木ヒルズだの丸ビルだのと比べたら低いですが、上に上がればそれなりに高い。あそこから飛び降りるとなれば、それなりに覚悟がいるでしょう。高所恐怖症ぎみだった当時、下を見て真剣に怖がっていた私です。


 そんな覚悟で、思い切って。
 始めてみました、ヴァイオリン。


 大人になってから始めるには難しい楽器なのは、百も承知です。実際、チェロ弾きの従妹には、難しいからチェロにしておけと言われました(チェロはチェロで腰痛持ちには厳しいそうなんですが…ヨーヨー・マも腰を手術してますし)。
 でもそれでも、やってみたかったんですよ。
 長い間、憧れていたんです。
 こう、行く先々へ気軽に伴えて、ひょいっと演奏を楽しめる、あの軽やかな楽器に。
(元々ピアノをやっていたので、ピアノと比べると余計軽やかに見えましたねぇ)
 自腹で楽器を習えるぐらいの小銭を持てる身分になり、ついに欲求を抑えることができなくなりまして。
 
 こうして私の手元に、スズキ君(スズキバイオリン№280)はやってきました。

 願わくば、このスズキ君とお友達になり、演奏を楽しめたらなぁ、と思っております。
 でもとりあえず、練習場所、見つけないとなぁ…。